子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「おまえ、ときどき妙に押しが強いよな」

 諦めたように保名さんが口を開き、私が差し出したスプーンを口に入れる。

 この瞬間が好きだった。

 こんなことができるほど、彼との距離が縮まったのを実感できるから。

「……おい、何で笑ってる」

「え? 今、笑ってた?」

「自覚してないのかよ」

 むすっと言われるけれど、幸せを感じたのだから仕方がない。

 さっきあなたも同じ顔をしていたと思う、とは言わないでおいた。


< 333 / 381 >

この作品をシェア

pagetop