子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 改めてそう考え、冷蔵庫を開ける。

 こういう時に限って、菓子に使えそうなものがない。

 溜息を吐いてから、台所のものをあれこれと漁ってみる。

 基本的な調味料などが揃っているのを確認し、ひとつちょうどよさそうなものを思いついた。

「なにか作るの?」

 おとなしくソファで座っていた琴葉が、不思議そうな顔をして覗き込んでくる。

「まあ、そうだな」

「保名さんが?」

「ほかに誰が作るんだよ」

「だって普段、料理なんてしないから。なにを作るの?」

「内緒。今日は食えないしな」

 琴葉の顔に困惑と期待が浮かぶ。考えていることがわかりやすい奴だ。

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