子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 残念ながらまだおねだりはしてくれないが、それも時間の問題だと信じている。

 ベッドの上でも積極的になるのだろうか、と余計なことを考えて手が止まった。

 彼女は昨夜も頬を紅潮させながら、息を荒らげ、甘い声で俺の名を呼んでいた。何度も好きだと囁き、俺の背に腕を回して。

「どうしたの?」

「なんでもない」

 手を止めていたからか、琴葉が見つめてくる。

 今は非常にまずい。俺は菓子を作らなければならないのだ。

「手伝おうか?」

「いい。じっとしてろ。邪魔だぞ」

「保名さんが料理するとこ、見たい。だめ?」

「……勝手にしろ」

 思いがけず、おねだりの機会が訪れてしまった。

< 339 / 381 >

この作品をシェア

pagetop