子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 きっとだめだと言えば彼女は肩を落として俺の側を離れるのだろう。

 それを許すような夫ではないつもりだ。

「それにしても、保名さんってお菓子を作れるんだね。自炊しないって言ってたし、私ぐらいなにも作れないのかと思ってた」

「おまえはある意味特別すぎる。料理はやらないだけでできないわけじゃないんだ」

 だいたい、とさらに続ける。

「簡単な菓子ぐらいなら作れる。和菓子屋の息子だぞ、俺は」

「職人になればよかったのに。保名さんなら、きっと和菓子職人になっても久黒庵をもっと成長させられたよ」

「俺には向いてない。……食べさせたいと思う相手がいなかったからな」

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