子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 豊かな色彩が遊ぶように広がり、複雑な模様を作っていく。

「このあとはどうするの?」

「完成だ」

「えっ、もう? 食べられる?」

「今日は無理だって言っただろ」

 落ち着かなげな琴葉を放置し、器を冷蔵庫へ入れた。

 あとは冷やして固め、好きな形にカットするだけだ。

「いつ食べられる?」

「食いしん坊だな。いいって言うまで待てないのか?」

「だって保名さんが作ってくれたお菓子だよ。今すぐ食べたい」

 ぱたんと冷蔵庫を閉じ、溜息を吐いて琴葉を振り返る。

「おまえ、そういうところがかわいいよな」

 目を丸くした琴葉の手を引いて、まっすぐ寝室に向かう。

 もうやることは終わったのだから、あとは好きにしてもいいだろう。

 琴葉はいつものように、俺に従っておとなしくついてきた。
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