子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「じゃあ、黄色。栗餅の色だから」

 琴葉のこういう安直さがかわいい。

 先に準備しておけばよかったと自分の手際の悪さに呆れつつ、食用の色素が入った小瓶を取る。

 爪の先ほどの粉を容器に落とし、まだ熱い液をそっと混ぜた。

 徐々に鮮やかな色が広がるのを、琴葉はまばたきもせず見守っている。

「きれい。どんなお菓子になるんだろう?」

「当てるんじゃないのか?」

「保名さんがうっかり言っちゃうのを待つ方がいいかなって」

「絶対言わないけどな」

 黄色の液を多めに作り、ほかにも青や赤、緑と用意する。

 先に鍋に入った透明な液を大きめの器に流し込んでから、作った色を落としていった。

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