子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 かつてはお父さんと甘えた相手に、慣れた敬語が飛び出す。

「当日になって花嫁が変わったら、保名さんだって困ると思います」

「つまりあなたは、妹が望まない政略結婚で不幸になってもいいと言いたいのね?」

 私の言葉を遮るように言ったのは母だ。

「あなたと違って、弥子には愛し合っている人がいるの。姉なら妹の幸せを応援してあげようと思わないの?」

 しようとしていた、と言ったところできっと聞いてもらえない。

 弥子は私の手首を掴んだまま、すんと涙を呑むように鼻を鳴らした。

 そんな相手がいたのなら、最初から保名さんとは結婚できないと伝えるべきだったのだ。

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