子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 はっきりしないのはきっと、彼がそう言う時に限って私がそれどころではないからだ。

「もっとたくさん、好きって言われたい」

「……いつも言ってるだろ」

 若干の照れを残して、保名さんが反論する。

「こんなに言ってるのに、聞いてない方が悪い」

「そんなに言われてたかなぁ」

 首を傾げようとするも、先に顎を捉えられて保名さんの方を向かされる。

 お互いに気恥ずかしさからなかなか合わない目が合った。

「言葉より、行動で示す方が得意なのはある」

 保名さんは呟くように言って、私の唇を包むように塞いだ。

 ゆっくりと彼と熱が重なり、また離れていく。

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