子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「いや? この流れで仕事はしないだろ、普通」

 顔を寄せられ、思わず身をすくめる。

 ちゅ、と耳の近くで甘いキスの音がした。

「どうして急に……?」

 私は彼に勧められるまま、新作の水ようかんを食べていただけだ。こんな空気になるようなことはしていない。

 保名さんはふっと口もとを緩めて、私の目尻にも口づけた。

「なにしててもかわいいんだよな。だから触りたくなる」

「私、なにもしてないのに」

「おまえが食うところを見るのが好きなんだ。言ってなかったか?」

 言われたような気がするし、言われていないような気もする。

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