子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 それはこれから結婚を迎えるはずなのに、別の花嫁を宛がわれようとしている保名さんの言いたいことではないだろうか。

 父が自身の胸に顔を埋めた弥子の頭を撫でながら、再度私の方を見る。

「弥子の事情はもうわかっただろう。今日の結婚式にはお前が出るんだ。わかったな」

 でも、と喉奥で声が引っかかってしまう。

 母も父と同じように私を見て、形のいい唇に哀れみの混じった笑みを作った。

「こんな機会でもなければ、結婚なんてできないでしょう。譲ってくれた弥子に感謝しなさいね」

「ねえ、琴葉。変わってくれるよね?」

 お願い――と続けられて泣きたくなった。

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