子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 これまでの人生で数少ない買い物はいつも現金だったし、両親が私にカードを持たせたがらなかったからだ。

 どう使うものなのか尋ねた方がいいのだろうか。

 悩んでいるうちに、保名さんはキッチンに向かって歩き出す。急いでその後を追った。

「これからふたり分の食事を毎回買って帰るのは面倒だからな。食事の用意も任せる」

「実家のものと違いますね……? これがコンロですか?」

 それらしき場所に近付いて質問する。実家のコンロと違い、火の出る場所がない。

「IHコンロを知らないのか?」

「あいえいち……。すみません、初めて見ました」

「……こんな常識さえ知らないわけだ」

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