子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「仕事ができない分、掃除をするのは当然だと思いますが……」

 不思議に思うも、保名さんは訝しげな目で私を見るばかりだった。

 そんなにおかしな話をした覚えはないが、彼にとってなにかが引っかかったようだ。

 もしかして、仮にも歴史のある名家の長女が積極的に掃除をしようとするのは、好ましくないのだろうか。

 不安になった私へ、保名さんが一枚のカードを渡す。クレジットカードだった。

「認めたくないが、離婚するまではおまえが俺の妻だ。買い物が必要なら、これを使え。くれぐれも使いすぎるなよ」

 はい、と答えて受け取りはしたものの、私にはカードの使い方がわからない。

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