子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
 温めるだけでいいならレンジでも大丈夫だろうか、それとも保名さんにトースターがどれかを聞くべきか。しかし彼は仕事の準備で忙しいはずだ。こんな質問で彼の時間を無駄にするのは気が引ける。

 こんな時、どうすればいいのか、なにをするのが正しいのか私にはわからなかった。

 食パンを片手におろおろしていると、部屋から保名さんが戻ってくる。

「……なにをしてるんだ?」

 スーツに着替えた保名さんが、立ち尽くした私に向かって問う。

「すみません、トースターがどれかわからなくて……」

「トースターもわからないのか?」

 咎めるような響きにびくりと肩を震わせる。

< 60 / 381 >

この作品をシェア

pagetop