子作り政略婚のはずが、冷徹御曹司は蕩ける愛欲を注ぎ込む
「そんなに忙しいなら、私たちとゆっくりお茶を楽しむ時間もないのでしょう。久黒庵(くくろあん)さんからいただいたお菓子は、私と弥子で食べておいてあげるからね」

「……ありがとう、ございます」

 母の前にいると胸が苦しくて、うまく呼吸ができなくなる。

 彼女は私の生母ではない。五歳で母を亡くした翌年、父が再婚したふたり目の母親だ。そしてひとつ下の妹、宝来弥子は彼女の連れ子である。

 母が汚らしいものを見る目で私の頭から足の先まで、視線を動かす。

 血縁関係がないのもあり、私と母に似たところはない。一方、弥子は母と瓜二つだ。

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