私だけを愛してくれますか?
「ただいま」
美織が帰ってきた。
俺は走って玄関まで出向く。薄桃色の着物を着た美織は、いつも以上に綺麗だ。
その横に立つ友人もキリリとして、いつも通りカッコいい。
「ダイ!大事な妹は渡さんぞ。家の中に入るなら、俺を倒してから行けっ!」
仁王立ちになって、行く手を阻止する。
「お兄ちゃん…」
美織がつぶやいたときに、後ろからパコーンと頭を叩かれた。
「アホなことを!あんたは引っ込んでなさいっ」
見ると、スリッパを手に持ち、般若のような顔をした母がいた。
「美希ちゃん、頼んだで」
「わかりました」
二人で深くうなずき合い、俺の横からは、美希が腕をぐいぐい引っ張ってくる。
二人がかりで俺の邪魔をする気か!
小競り合いをしていると、奥から親父が出てきた。
「入ってください」
負けた…。ガクッと項垂れる。
親父、念を送っただろう!何も通じていなかったことが悔しい。
『最早これまでか』と思ったところへ、ドンが悠々とやってきた。
ドン!お前だけが頼りや。気持ちが上向く。まだまだ勝負はこれからや!
すると、ドンは、喉をグルグルと鳴らしながら大の足元にまとわりついた。
「ドン、久しぶりやな」慣れたような手つきで、大はドンを撫でた。
ドン、お前もか…。無念。
俺は両ひざを折って、その場に崩れ落ちた。