元婚約者の弟から求婚されて非常に困っています
その後もテキパキと準備をしてくれるルーナに連れられ、私は屋敷の前に用意された街へのお忍び用で使う馬車に乗り込んだ。
「いいですか?時間は厳守ですよ、お嬢様。旦那様も確か今日は18時には帰宅されますからね」
「えぇ。今日は早く帰られるって前に言ってたものね。大丈夫、その前にはちゃんと戻ってくるから」
窓からニコッと微笑むと、
「そしたら、出発してちょうだい」
御者に向かって声をかける。
「お嬢様、行ってらっしゃいませ」
軽く会釈して、私を見送るルーナを置いて馬車は颯爽と走り出した。
ガタガタと、揺れる馬車内で、
「…はぁ」
と、私は小さくため息をこぼす。
「この姿でノエルに会うのはやっぱり気が引けるわね…」
彼は、ノアを気楽に話ができる知人くらいに考えているのだろう。
けど、実はノアがエレノアだったなんてバレた日には…
なんて嫌味を言われるかと、想像しただけで恐ろしい。
というか、私が逆の立場だったら絶対しばらくは口をきかないもの。