追放されたチート魔導師ですが、気ままに生きるのでほっといてください

　生態系の分類からすれば、歴とした「豚の一種」なのだろうけれど、間違っても家畜として飼われているような生き物ではない。

　クロエは実際に見たことがないが、それがどんなものなのかよく知っている。

　なにせ、故郷のシュラウベでも年に一度や二度は木こりがヘンウェンの犠牲になるのだ。

　一角豚ヘンウェン──それは、冒険者ギルドから「永久討伐対象」に指定されている、人に害なす「魔獣」だった。

「あっ、もしかして豚がダメだった？」

　プリシラは黒いライ麦パンにサロを乗せようとしていた手を止める。

「あ、いや……豚がダメだというか」

「だったらぺリュトンのシュナップス煮込みもあるよ。ぺリュトンのもも肉を生姜とシュナップスでじっくり煮込んだやつ。これがまた美味くてさ。鹿肉の旨味が凝縮されてて、頬張った瞬間に肉がほろっと口の中で溶けて──」

「わあ?、何だかすごく美味しそうだね。だけど、うん、ぺリュトンも魔獣だよね？」

「そうそう！　そうだよ、鹿の魔獣！　鳥と鹿のハーフなんだけど、これがすっごいモフモフなんだ！　食べても美味しいし、見た目も可愛いって最高だと思わない？」