追放されたチート魔導師ですが、気ままに生きるのでほっといてください
 鹿の魔獣ペリュトンは魔獣の中でも比較的おとなしい部類の魔獣で、食事を邪魔したりしない限り襲ってくることはない。なのに多くの死傷者が出たのは、ローエンがペリュトンを刺激して怒らせたせいなのだ。

 そもそも、なぜこの男がしゃしゃり出てきたのかとプリシラは憤りを覚えてしまう。

 この嫌味ったらしく豪華な服で着飾っているローエンという男は剣士でも魔導師でもない。魔王討伐隊を組織した商業ギルド「ブリューゲン」に所属するただの商人で、隊の管理者として帯同しているだけなのだ。

 もしかすると、見た目が弱そうな魔獣だったから自分でも倒せるとでも思ったのだろうか。だとしたら無知にも程がある。

 いくら見た目が弱そうだとしても、魔獣は魔獣なのだ。

 魔獣とはその名の通り、魔力を持った獣のことを指す。十年前に起きた「第四次獣人戦争」でその多くが聖女ウルスラによって滅ぼされたが、未だに冒険者ギルドからは「永久討伐対象」に認定されている「人に害なす危険な獣」なのだ。

 歴戦の傭兵ならまだしも、商人がひとりで戦える相手ではない。

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