恋に異例はつきもので
 3階に着くと、部長が扉を開けて待っていてくれた。
 部長……

 でも、実際に彼の姿を目にしたとたん、わたしが感じたのは後悔。
 急に弱気が顔を出した。

 なんてことしてるんだろう。わたしは。
 ほぼ真夜中に男性の家を訪ねるなんて。
 本当、いまさらながら、自分の無節操さにあきれる。

「すみません。あの、こんな夜分に」
「入れ」

 シャワーを浴びたばかりなのか、部長の髪は少し湿っていた。
 上下ともシンプルなダークグレーのスウェットというラフな姿の部長が、まるで別人みたいに思えて、さらに落ち着かない気持ちが募った。

「いえ、ここで。ただ一言、どうしてもお伝えしたいことがあるだけなので」

「いいから入れ。こんな時間にこんなところで話なんかしたら、近所に迷惑だ」

 あっ、たしかに。
「すみません。じゃあ」

 で、そのまま上がらずに玄関口で話そうと思ったけれど、部長はわたしを置いて、さっさと部屋に入っていってしまった。

 わたしはおそるおそるその後を追った。
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