コンチェルトⅡ ~沙織の章

「お帰りなさい。」

と沙織が 紀之のバッグを 受取る後ろで、

樹と翔は 共犯者の顔で 微笑み合う。


紀之と沙織も、顔を見合わせて 笑ってしまう。
 


「樹、翔。お風呂入ろう。お父さん着替えて来るから、お片付けして。」

リビングで お母様に 声を掛けた後で、紀之は子供達に言う。


樹と翔は おもちゃや本を片付け 紀之の後を追う。
 


樹も翔も 幸せだと 沙織は思う。

こんなにも 帰りが待ち遠しい 父親がいる。


だから 二人とも とても素直に育っている。
 


こんな 普通の光景が 沙織は大好きだった。

言葉にできない 幸せを感じる。


そして 幸せだから 優しくなれる。


愛されているから、もっと頑張れる。


沙織は 結婚してからの自分が とても好きだった。
 








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