不条理なわたしたち
本庄さんに挨拶を返すと目をパチパチさせた本庄さんに顔を覗き込まれた。

「どうかした？顔色が良くないよ？昨日休んだのに大丈夫？もしかして風邪だった？」

どうやら顔に出ているようだが、事実を言えるはずはない。

「何でもないですよ！病み上がりだからでしょうかね！」

風邪ということにして笑顔で誤魔化した。

「風邪か、無理しないでよー？週の半分過ぎた辺りはダルくなるしね」

なんとか誤魔化せるとこっそり息を吐いた。

「あ、葵ちゃん、今日いつもと違う匂いする」

突然くんくんと犬のように私の近くに顔を寄せて鼻を動かしている本庄さんに心臓が飛び上がった。
香りの出所は間違いなくこの首に巻き付いている蓮水さんのマフラーだ。

「そうなんです！昨日買い物行った時に良い匂いだなぁって見つけたんですよ！気分を変えて香水付けてみたんです！」

私は慌てて笑顔で捲し立てた。
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