不条理なわたしたち
十五時には家に帰った。
妊婦の私に無理をさせたくないからだそうだ。

「服は寝室のウォークインクローゼットに入れてね」と言われたが遠慮した。
蓮水さんの服がいっぱいだったし、彼の家の空間に入るのは申し訳なく感じたから。
空いている一室のクローゼットを借りることにした。


「はい、どうぞ」

「あ、ありがとうございます……」

ソファの前のローテーブルにマグカップが二つ置かれた。
蓮水さんが先程買ってくれたノンカフェインのコーヒーを作ってくれた。

私の横に座るとコーヒーを啜った蓮水さん。

「やっぱり普通のコーヒーとは味が少し違うね」

眉を下げている蓮水さん。

「私に合わせなくても良いですよ」

蓮水さんに気を遣わせていたらと思うと気が引けた。

目をマグカップに向けていたら、私の頬に筋張った長い指が触れた。
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