不条理なわたしたち
渋々だが、珍しく引き下がってくれてまたホッとしてしまう私はつくづく卑怯な人間だ。

それなのに蓮水さんは嫌な顔をせず私に合わせてくれる。

私も誠意を見せなくてはいけない。

持っている箸を持つ手に力を込めると口を開く。

「あの、蓮水さん」

「何?」

「私…ちゃんと考えます……蓮水さんと、赤ちゃんのこと」

蓮水さんの瞳を見据えながら伝えると、気持ちが伝わってくれたのか、彼の瞳は優しい形になった。
その瞳にドキッとして料理を見ながら続ける。

「暫くはお世話になるので、私も家事をお手伝いしますね」

「その必要は無いよ」

申し出るがあっさり断られた。
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