不条理なわたしたち
「観たいテレビあったら観て良いからね」
食事を終えると向かい側に座る蓮水さんが言った。
「特に観たいテレビは無いです」
「遠慮はしないでね。自分の家だと思って過ごしてよ」
遠慮はしていない。
でも十畳のワンルームからこんな豪華なマンションに来て寛げるほど私は肝は座っていない。
とはいえ、晩ご飯はトレーを捨てておしまいだし、お風呂も済んでしまっているしで、やることがない。
どうしよう。
ダイニングチェアに腰掛けたまま私は狼狽える。
「蓮水さんは観たいテレビ無いんですか?」
困り果てた私は蓮水さんに投げた。
「無いよ。この時間に家に居ることがあまり無いからね」
「確かに家で蓮水さんがバラエティ観て笑ってたりする姿は想像出来ません」
マジマジと返すと蓮水さんがプッと噴き出した。