眼力 ~Cruzar Another story 1/5~
「この世界に絶望したんでしょうね…
死にたいほどに。」

呟いた渋谷の暗い顔が下を向く。

渋谷は優しすぎる。
どんな犯人にでも同情してしまうのは、いずれ自分の命を危険にさらしかねない。
最悪、大切な人を巻き込むことさえあることをこいつはまだ知らないのだ。


重たい空気が流れる部屋にバイブ音が響いた。

「大塚さん、凛ちゃんからです。」


渋谷から渡させたスマホの向こうから『大塚のおじ様。』と幼い声がした。

『凛、どうだった?』

その問いに、彼女は早口ではないが一気に話し出す。
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