奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~


「梨音のために、間野家と縁を切って会社も辞める覚悟です」

「か、奏……」

敦子はポロポロと涙を流し始めた。

「どうして、どうしてみんなあの子を選ぶの?」

振り絞るような声で叫ぶが、奏は耳を貸さない。

「敦子。君は人として許されないことをしたようだね」

「私は、私は………?」

諭すように告げる夫の言葉に、敦子はポカンと口を開いたまま固まった。
自分がなにをしてしまったのか、初めて気が付いたようだ。

「すまない奏、夫として妻の行動に気が付いていなかった」
「お父さん」

父は妻の異常な状態を知って、夫として素直に詫びている。

「だが私の言い訳はあとにしよう。奏の立場は今のまま変えることは許さない」
「でも」

奏の覚悟はあっさりと拒否された。

「会社のことは気にするな。それよりも、今は梨音くんが心配だ」



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