奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~
11月になった。穏やかな小春日和の土曜日。
今日は、梨音の作品の受賞式と記念コンサートが開かれる日だ。
律が生まれてから、奏は茅ヶ崎に自分の家を構えた。
彼もこの辺りの環境が気に入ってしまい、子育てにはピッタリだと考えたのだ。
購入したのは、以前に梨音と住んでいた都心の豪華なマンションや間野家のような豪邸でもない。
親子が寄り添って住めるくらいの広さで、庭のある家だった。
そして律と梨音と三人で暮らし始める前に、ようやく梨音と入籍して正式に夫婦となった。
「梨音、そろそろコンサートの配信が始まるぞ」
梨音は茅ヶ崎の新居でのんびりと過ごしており、授賞式には出席しない予定だ。
奏はリビングルームから梨音に声をかけた。
「はあい。でもりっくんがおっぱい飲みたがっているの」
寝室辺りから梨音の返事が聞こえてきた。
奏はソファーに座ってパソコン画面を見ながら、ついぼやいてしまう。
「また、律が優先か」