奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~
奏はわが子が愛しくてたまらない。
だが律が生まれてからは、梨音とふたりだけの時間がなかなかとれなくて悶々とすることもある。
「律のやつ、食いしん坊だからなあ」
律はまだ母乳を飲んでは眠って、また飲んで眠っての時期だ。
少しずつ授乳の間隔はあいてきたが、こればかりは奏より律が優先されても仕方がない。
(手がかかるのは、俺に似たのかもな)
やっと梨音が律を抱っこしたままリビングにやってきて、奏の隣に座った。
「敦子お義母さんがトロフィーを受け取って下さるんでしょ」
「ああ、授賞式は任せるって言ったら喜んでた。梨音が作ってくれた曲だからな」
「よかった。敦子お義母さん元気になって」
ツンツンと頬をつつきながら奏が話しかけると、律が笑顔になった気がする。
「お、今笑ったか?」
梨音は律を可愛がる奏の反応の方が嬉しそうで微笑んでいる。
「今夜はトロフィー持って父さんと茅ヶ崎にくるって言ってたぞ」
「お義父さんがこの前買った別荘へ?」
律の顔見たさに、間野家は新たに別荘を購入していた。
「孫の近くにいたいんだろう」
「もうすぐお宮参りだものね」
「ああしょっちゅう来られたら……邪魔だな」
奏がうんざりとした顔をするのがおかしいのか、梨音は今度は声を出してクスクスと笑った。