奏でる愛は憎しみを超えて ~二度と顔を見せるなと言われたのに愛されています~
フーガのように

 
***


2月のあの夜、怒りにまかせてマンションを飛び出してしまった奏は、頭を冷やそうとしばらくホテルで暮らすつもりだった。
だがロサンゼルス支社でトラブルが発生したため、急遽出張することになった。

(仕事に集中しよう。すべてはそのあとだ)

奏は怒りでどうにかなりそうな自分を抑え込んで、仕事に逃げたのだ。
やっと目途が立って帰国したのは3月に入ってからだった。

梨音からの連絡はもちろんなかったし、自分からもしていない。
ずっと愛し続けてきた女性が自分を裏切ったと思うと、奏はおかしくなりそうだった。

上半身裸で寝室から出てきた京太。
寒い夜だというのに、汗ばんでピンクに上気した顔の梨音。

決定的だったのは、梨音の胸元にあるホクロの話だった。
自分以外の男がそこに触れたかと思うと嫉妬で狂いそうになった。

掛け替えられたばかりの真新しいシーツが目にはいった途端、奏は冷静さを失った。
全てが京太の言い分を証明していたのだ。





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