凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました～臆病な彼女を溶かす溺愛初夜～
「朱莉ちゃんのご両親がやっているお店に行きたいな」

　彼女の実家は空港の近くで飲食店を経営している。

　ランチ営業をしている居酒屋にはこれまでに三度お邪魔しているが、こじんまりとしたアットホームな雰囲気が心地よく、なにより料理がとてもおいしいのだ。

　しかし私の言葉を聞いた途端、朱莉ちゃんの表情がわかりやすく曇る。

「菜乃さんには悪いんですけど、飲みに行くのは別の場所にしましょう。実はお母さんと冷戦中でして」

「なにかあった？」

「早く結婚した方がいいというのはずっと言われてきたんですが、この前ついにお見合い話を持ってきたんです」

　お見合いという聞き慣れないワードに目を剥く。

「まだ二十五歳ですよ？　仕事だってまだ三年目なのに、なにをそんなに急ぐ必要があるのか理解不能で、ちょっと言い合いになったんです」

「それは……大変だったね」

　詳しい事情を知らない以上、それ以外に掛ける言葉が見つからない。

　もしかしたら、食欲不振なのは母親とのいざこざも関係しているのではないだろうか。

　心配だなあと見守っていると、朱莉ちゃんは頑張ってうどんを食べきった。

「なんだかんだ、食べたら元気になった気がします」

「それはよかった」

　あと少し頑張ろうと互いに気を奮い立たせ、食堂をあとにした。
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