凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 その後、全体ブリーフィングを経て十四時十五分にタイムカードを切って、更衣室でいつもより入念に身なりを整えた。

 朱莉ちゃんに途中まで一緒に帰ろうと誘われたらどうしようかと思いあぐねていたが、こちらの心配をよそに「健闘を祈ります!」と言って、あっさり先に帰っていった。

 なるべく人目につかないように、最後のひとりになるまで更衣室に残り、ようやく待ち合わせ場所に向かう。

 椎名さんは気をきかせて、駐車場ではなく空港からすぐの裏路地に車を停めて待っていた。

 車の正面に回って顔を覗かせると、フロントガラス越しに椎名さんが「乗って」とジェスチャーする。

 助手席のドアを開けて中に入ると、気持ちのいいエアコンの冷風が身体にあたって肩から力を抜いた。

 よかった、無事に会えた。

「お疲れさま。暑かっただろう」

「椎名さんもお疲れさまです。こちらこそ暑いところでお待たせしてすみません」

「たしかに暑いよな。どこか日陰に移動しようか」

 シートベルトを締め、車があてもなく動き出す。

 今日の椎名さんも素敵だ。白のリネンシャツに濃いネイビーのテーパードパンツ。スタイルと顔がいい人って本当になんでも似合う。
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