凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「事故渋滞など、もしなにかあって帰宅時間が遅れ、明日のフライトに影響が出てはいけないので、家の近くにしませんか」

 仕事第一の新川さんらしいなと感心すると同時に、それだと場所が限られるので料理がおいしい店に連れていけない、と残念な気持ちになる。

 ご馳走をしたいと言われたがもちろん彼女に財布を出させるつもりはない。

 複雑な心境でいると、新川さんは何故か頬を赤らめてお腹の辺りで両手を握り合わせる。

「この前みたいに隠れたりしなくていいので、椎名さんの食べたいものがあるところに行きましょう」

 またもや驚かされ、一瞬呆けてしまった。うかがうように上目遣いで見られハッと我に返る。

「それなら、そうしようか」

 どういう心境の変化か問いたい気持ちはやまやまだが、余計な詮索をして気が変わられたら困る。

 それからは言葉少なに駐車場まで移動して車を発進させた。

「そういえば、急な配置換えは病院から連絡があったからか?」

「そうです。ブリーフィングのタイミングで病院から電話が入ったので、運航状況の確認が遅れ、ゲート業務にあたれなかったんです」

 そんな状況ならなおさら早退すればよかったのに、と眉間に皺が寄る。
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