凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 俺は明日フライトがあるし、新川さんも母親になにかあったらすぐに動けるようにとソフトドリンクで乾杯した。

 おいしい料理を楽しみ、穏やかな時間はあっという間に過ぎていく。デザートまでしっかりと堪能して店をあとにした。

 夏は一番日の長い季節だ。もう夜と呼べる時間帯なのに辺りは明るい。

 ここからマンションまで十五分とかからないので、名残惜しい気持ちになりながら車を走らせた。

 もうすぐ着くというところで、なんの前触れもなくフロントガラスに大粒の雨がばたばた落ちてきた。車体を叩く音が響き、みるみるうちに地面が黒く染まっていく。

「すごいな」

「夕立にしては遅いですよね。明日って雨予報でしたっけ」

「明日は晴れだ。だから夕立みたいなものだろう」

 互いの声が聞き取りにくいほど激しい雨音がしている。

「この前も雨でしたね」

 新川さんは窓外を見やりながら、眉根を下げて困ったようにつぶやく。

 また車内で雨宿りをしなければいけないのを悲観しているのか。……彼女のことになるとどうもマイナス思考になる。
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