凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 マンションの前に到着しても雨脚は鋭いままだった。

「今日も弱まるまで、待たせてもらってもいいですか?」

「もちろん」

 それ以降俺たちの間には会話が生まれず沈黙が落ちる。

 乗車してから新川さんの表情はまた曇り始め、今も継続して頬を引きつらせている。

 密室で俺とふたりきりだから警戒している?

 そう考えたらそうとしか思えず、やるせない気持ちにさせられた。

 まいったな。このままだと彼女が離れていく気がしてならない。

 雨で視界が滲むのをぼんやり眺めていたら、新川さんが「あの……」と掠れ気味の声を出し、シートベルトを外して身体ごとこちらに向ける。

 ただならぬ予感にハンドルに置いていた手に力を込めた。

「先日の返事をさせてもらってもいいでしょうか?」

 え、今?

 動揺しつつ「ああ」とうなずいた直後に咳が込み上げる。ケホッケホッと咳払いをして、口元に持っていった手はそのままに新川さんを見つめた。

 澄んだ瞳を真っ直ぐに向けられ心が波立ち騒ぐ。
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