凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「マメな人なのかな。電話も苦手じゃないなら菜乃と合いそうだよね」

 つい首を縦に振りそうになって焦った。だから、合う合わないとかの相性の問題ではない。

「私と違って選ぶ相手がたくさんいるのに、あえて面倒そうな女を相手にすると思う?」

「それは人それぞれじゃない。今は仮の話だからいいけど、椎名さんが本気で菜乃を好いていたとしたら、自分を卑下すると同時に椎名さんも蔑むことになると、ちゃんと理解して発言してね」

 真面目に諭されて、可能性はゼロだとしても椎名さんに好意を持ってもらえたら、姉の言うように自分の言葉に責任を持たなければいけないのだとハッとする。

 少なからず椎名さんは、私の過去の話を聞いても偏見の目を持ったりせず、それどころか親身になってくれたのだから。

「もうこんな時間? 菜乃、そろそろ行かないとエステに間に合わない」

 まだお腹の底でモヤモヤしたものが渦巻いているけれど、椎名さんに会う前にエステで全身を綺麗にしておけることに、心が浮き立っているのもたしかで。

 抗えない大きな波に飲み込まれそうな予感がして、戸惑いや恐怖心などがない交ぜになり指先が微かに震えた。


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