凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 パイロットは着陸最後の数秒間のフレアーという機首の引き起こし操作によって、いかに機体をスムーズに接地されられるかという技術が問われるそうだ。

 それゆえに訓練でもっとも多くの時間をかけていると聞く。

 昨日は天候に恵まれていたおかげもあり、椎名さんのランディングはとても気持ちのいいものだった。

 って、呑気に感想を抱いている場合ではない。

 シートベルトサインが消え、ます初めにバッグからスマートフォンを取り出して機内モードを解除する。

 届いていたメッセージには、車が停めてある詳細な位置が記されていた。

 鼓動が速くなる。ドキドキなんて可愛いものではない。バクンバクンッと大きく跳ねて口から心臓が飛び出そうだ。

 駐車場へ向かう前にトイレで用を済ませ、化粧が崩れていないか最終チェックをして、椎名さんのもとへいざ向かう。

 えっと……椎名さんの車は、黒のスポーツセダンだよね。

 この時間帯でもまだたくさんの車が駐車されている。どこだろうと立ち止まってキョロキョロしていると、どこからともなく「新川さん」と声が響いた。

 びっくりして硬直する。すると遠くの方から足早にこちらへ歩いてくる椎名さんの姿が見え、私も急いで向かう。
< 71 / 248 >

この作品をシェア

pagetop