凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
 表情が確認できるくらいの距離になると、気恥ずかしさから目が合わせられない。

 俯きながら、まずはお礼を伝えた。

「フライト後で疲れているのにすみません」

「俺が会おうって言ったんだから気にしないで」

 椎名さんは喋りながらとても自然な動きで私の手から荷物を奪う。あっ、と思ったが、奪い返すのもおかしい気がして、歩き出した彼の横に並んだ。

 車の後部座席に荷物を置いてから、助手席のドアを開けた椎名さんに「どうぞ」と促される。

「お邪魔します」

 おずおずと皮のシートに腰を下ろして、運転席に回った椎名さんの姿を追いかける。

 椎名さんは座ってすぐにエンジンをかけ、エアコンの位置を調整した。

「風あたってない? これでいい?」

「むしろ全力で風を浴びたいです」

 ここまで移動して身体が火照っているのと、男性と車内にふたりきりという状況に緊張して、服の下では汗が噴き出している。

「それなら自由にいじって」

 椎名さんはおかしそうに笑って、運転席と助手席の僅かな隙間からうしろに手を伸ばした。

 私の方に椎名さんの身体が寄って、ドキッと心臓がひときわ大きく跳ねた。
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