凄腕パイロットの極上愛で懐妊いたしました~臆病な彼女を溶かす溺愛初夜~
「念のために確認させて。これで合ってる?」

 後部座席から取り出したのは包装紙に博多通りもんと書かれた箱。

「合ってます。ありがとうございます」

 帰ったら早速食べよう。嬉しくなって微笑むと、椎名さんも優しい顔になった。

 ちょっと、どうしよう。頭がくらくらしてきた。

 魅力たっぷりの男性が目と鼻の先にいて私を見つめている。息継ぎの仕方が急にわからなくなって意識的に深呼吸した。

「まだ食べていなかったんですね。今開けていいですか?」

「これは新川さんのだから、さすがに勝手に開けるのはどうかと思ってね」

 購入したのは椎名さんなのに律儀な人だと思う。

 包装紙をバリバリと破っていく途中で、隣からクックッと堪えるような笑い声が聞こえて顔を上げる。

「意外と大胆なんだな」

 破り方について言われていると気づき肩をすくめた。

「どうせ捨てるので、丁寧に剥がさなくてもいいかなと」

「そうだな。同感だ」

 本心はどう思っているかわからないけれど、賛同をもらえたので更にビリビリッと勢いよく紙を引き裂いて、手のひらでぐしゃっと丸めた。

 再びクツクツと笑われて、なにがそんなに面白いのかと訝しい目を向けながら通りもんを一個取って差し出す。
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