青に抱かれて
カロリーナは、スマホで何かを検索し始めたと思えば、
「そもそもグラナーテ家を知らない人はベネチアにはいないからね」
と、説明を始める。
グラナーテ家とは、イタリア国内では名高い資産家。
ーー主にホテル業界や飲食業界で絶大な勢力を伸ばしているが、ジュエリーブランドLuceを始めに、高級ファッションブランド、高級腕時計ブランドなど、ブランド店の経営も行っていて、その地位を確立している。
「今のグラナーテ財閥のトップは、御歳72のフェデレ会長ね」
そう言って、カロリーナはスマホの画面を私に見せた。
腕を組む白髪の老夫婦がスマホに写っていて、どうやらフェデレ会長とその妻らしい。
そして、そのまま画面を下にスクロールする。
「で、この方がフェデレ会長の息子、アンドレ社長。グラナーテ財閥の舵を取っているのは、フェデレ会長だけど、Luceなどのブランド店の経営はアンドレ社長に任されているのよ」
スマホ画面には47歳と書かれていて、フェデレ会長譲りのキリッとした目をしていて、敏腕社長オーラが溢れ出ている。
「それで、そのフェデレ会長の孫で、アンドレ社長の息子が、レイ・グラナーテ。って、なんで急にこんなこと聞くのよ」
「今回の依頼人、そのレイ・グラナーテっていう人なんだよね」
「はああっ!?」
カフェ中に響き渡ったカロリーナが大声に、慌てて「シーッ!」と口を抑える。