白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
ウィルバーと怪盗アプリコット・ムーンと甘い拷問

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「ん……」
「気がついたかな、お姫様」

 ローザベルがウィルバーの腕に囚われたまま意識を失って数刻。
 相変わらず全裸のままだし、魔法封じの手枷はつけられたままだが、閉じ込められていた檻のなかではないことに気づき、ローザベルは目をまるくする。
 空色の瞳が、嬉しそうにローザベルを見つめている。憲兵団の制服を着た彼が、お姫様抱っこをした状態で、檻の外へと連れ出してくれたのだろう。
 思わず「ウィルバーさま」と言いそうになって、ローザベルは慌てて首を横に振る。

「――憲兵団長ウィルバー・スワンレイク」
「俺の名前を覚えていてくれたなんて、光栄だな。怪盗アプリコット・ムーン」

 一瞬だが、ローザベルは錯覚していた。
 怪盗アプリコット・ムーンは“やりなおしの魔法”に失敗して、夫であるウィルバーの前で正体を明かし、捕らえられたのだと。
 けれど、目の前にいるウィルバーは、ローザベルを妻だと思っていない。自分が捕まえた女怪盗を戦利品のように扱っているだけ。

「……ここは」
「花の離宮の地下神殿の、拷問部屋だ」
「な」
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