白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

「――あ、あれでも加減はしてい……最後までしても別に構わなかったんだが……って何を言わせる……あぁ、やっぱりお前にピンクは似合うな。薔薇の花の妖精のように可憐だ」
「っ」

 かつての夫とは思えない言動をとりながらも、ウィルバーはローザベルが素直に渡されたガウンを着ていたからか、嬉しそうに賞賛する。

「これ……ほかの女性のために準備していたものじゃないの?」
「何を莫迦なことを。俺がこのガウンを買ったのは昨日の朝だぞ。お前を捕まえて檻に閉じ込め、王城へ報告しに行った際に街で見かけてピンときたんだ……黒い服より、こっちの方が断然似合う」
「――そんな」
「ラーウスの花嫁衣装らしいな……こんなに破廉恥なガウンを一枚だけ花嫁に着せて、衆人環視のなか愛を誓うなど、酔狂なものだ。だが、怪盗だったお前にこのガウンを羽織らせて見せしめのように犯すのは楽しいだろうな……なんて、怯えるなよ。誰にも見せるわけないだろ。俺だけの愛玩奴隷にするんだから」

 古民族の婚礼衣装を捕らえた怪盗に着せた理由は、ローザベルはウィルバーのモノだと自覚させるため。
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