白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 ウィルバーの思いがけない独占欲にあてられて、ローザベルは愕然とする。

「なぁ……風呂もトイレもないこの檻にずっといるのは窮屈だろ? 陛下は美しい監獄に女怪盗をつなげと命じたが、同時に俺に花の離宮内では好きにしろとおっしゃっている。俺はこの花の離宮に暮らしている。薄暗い檻のなかより、俺は……陽のひかりがあたる寝室に監禁したい」

 そこで、昨日のつづきをするのだと、暗に示唆されて、ローザベルは顔を真っ赤にする。

「うそ」
「嘘なんか言わねぇよ。こっちもいちいち地下に降りる必要がなくなるから時間の短縮になる。お前だって檻のなかでずっと壺に用を足したり、汗をかきっぱなしのままでいるのは辛いだろう?」
「でも……」
「でもじゃない。朝食を食べたら、移動だ。寝台はひとつしかないが、おおきいから問題ないよ」

 そう言って、ウィルバーはニヤリと笑ってローザベルを膝の上へ座らせる。そのまま朝食の入ったトレイを取り寄せ、スープに固パンを浸したかと思えば、「あーん」とウィルバー自らがローザベルに食べさせようと固パンを口の前へ持ってきた。

「ひ、ひとりで食べられますっ」
「口移しの方が良かったか」
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