白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

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「――わたしたちは、夫婦だったのです」

 思いがけない求婚を素直に受け入れ、キスに促されるように真実を語り出したローザベルの姿を、ウィルバーは信じられない思いで見つめていた。

 自分達は政略結婚によって十歳のときに婚約を結び、十八歳で結婚していた。
 ローザベルはノーザンクロスの一族として、“不確定な未来”を視た際に“稀なる石”をつかう“やりなおしの魔法”と呼ばれる時間干渉で国家の危機に対処するという密命を担っており、なぜかウィルバーとの結婚初夜に“不確定な未来”を視てしまった。
 しかもその内容が夫が国王を殺すというもので、ローザベルはどうにかして未来を確変させねばと、誰にも相談せず怪盗となって“稀なる石”を集めはじめたのだと。

「なぜ、(おれ)に相談しなかった?」
「できるわけないでしょう、王を殺して処刑されるかもしれないから、未来を変えるために王家を敵に回して“稀なる石”を盗みに行ってくる、なんて……」

 国王アイカラスだけは自分の暗躍を知っていたこと。けれどやりすぎだと釘を刺されるように憲兵団を差し向けられたこと。
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