白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
花の離宮の神殿跡地にある妖精王の聖棺についていた“稀なる石”で、ほんのすこし時間軸をずらすつもりだった。
けれど、棺のなかからウィルバーが現れて、捕まってローザベルの正体を見られて、切羽詰まった彼女は、“強制終了”してしまったのだ。ローザベル・ノーザンクロスという存在を。
「――そこから先は、ウィルバーさまもご存じのとおりです。わたしは怪盗アプリコット・ムーンとして美しい監獄につながれ、憲兵団長に取り調べという名の甘い拷問を受けて、屈してしまった……」
「俺は……君になんということを」
「わたしが悪いんです。ウィルバーさまは怪盗アプリコット・ムーンを自白させるためにあのようなことをされていたんですから……」
しゅん、としょげかえったローザベルの肩を抱きながら、ウィルバーは反芻する。
たしかにはじめのうちは憎しみが勝っていた。憲兵団をかき回し、王家を嘲り欺いていた女怪盗。捕まえて、傷つけて、裸に剥いて、俺のモノだと思ったときにはすでに他の人間のキスマークが刻まれていて……待てよ?
「もしや俺は、俺に嫉妬していたのか……?」