白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~
「あの、ウィルバーさまが気にされているのはそこなのですか?」
「じゃあ、君の処女をもらったのは、俺なのか……?」
「何を言ってるんですか当たり前じゃないですか」
すっかり忘れているし、夫婦であった実感も沸かないままだが、ウィルバーはローザベルのその一言で舞い上がってしまう。
はじめからローザベルは、ウィルバーのことしか見ていなかったのだ。ウィルバーがはじめての男で、唯一の恋だったのだ。
思わず泣きそうになって、ウィルバーは歯を食いしばる。そんな彼を驚いた様子で、ローザベルが見つめている。
「――ウィルバーさま?」
「ごめん……ローザベル、君を忘れていて」
俺を護るために、ひとり怪盗アプリコット・ムーンとなって戦っていたなど、想像だにしなかった。
ましてや俺に嫌われたくないからと自分に関する記憶を消して、処刑されても構わないからと俺に捕まって。たくさんいやらしいことをされて、俺に調教されて。みどりの瞳を潤ませて抵抗する彼女に苛立ちながら、それでも確かに恋していた。あのとき、愛してしまったから抱いたというのは嘘ではない。