白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

「こうでもしないと憲兵団長と囚われの怪盗アプリコット・ムーンを花の離宮から王城に連れてくることはできなかっただろう? 夫婦水入らずな時間を過ごせと王も言っていたみたいだけど、さすがに四日もしっぽりされると他の業務に支障が」
「あの、ジェイニー……?」

 完全にローザベルの存在を思い出してぶつぶつ呟く幼馴染を不気味そうに見つめれば、彼女は「ううん、なんでもない」とにこやかに誤魔化す。ぜったいなんでもなくないやつだとうんざりした表情をすれば、お得意の透視術で勝手に心の声を読み上げ、くすりと笑う。

「まぁ、無事に旦那さんと仲直りできたみたいでなにより。よかったよかった。だけど未来視のちからで、自分が王殺しになって火刑に処されるところを視ちゃったのか。生きながらにして人肉を焼いていくのを夢に見るのはエグい……っと、睨むな睨むな」
「嫌がらせにしか聞こえないわよ、もう」

 こっちはようやくウィルバーさまと心を通わせることが叶ったというのに、こんな形でふたたび引き離されるなんて……
 きっとこの心の声もジェイニーには筒抜けのはずだ。けれど彼女は茶化すことなく、真面目な顔でローザベルに告げる。
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