白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

「そのことについてだが、ウィルバーが国王暗殺の実行犯として憲兵団に拘束されている」
「ちょっと!?」
「話は最後まで聞けってんだよ。憲兵団の取り調べで、鞄のなかから複数の薬が出てきた。そのうちの幾つかは怪盗アプリコット・ムーンを自白に追い込むために使われた媚薬だが、ひとつ、黒い丸薬の入った瓶が見つかったのだよ」
「……へ」

 ウィルバーが怪盗アプリコット・ムーンに使った媚薬は王城の東の塔で皇太子妃オリヴィアによって調剤されたものだ。
 結婚初夜につかう香油に、同じ香りの桃色の液体に、依存性が高く強力な自白剤……それ以外に、ウィルバーの鞄のなかから毒薬が見つかったのだとジェイニーは声を潜ませ、ここからが重要だぞとローザベルに伝える。

「その薬の不思議なところは、王城で作られた薬ではない、ってことなんだ」

 どういうことか理解できるかい? と目線で訴えられ、ローザベルは弱々しく応える。

「ウィルバーさまは、嵌められたのよ……あの、マイケル・コルブスに」
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