白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 だが、マーマデュークが建国二年目で急死し、現国王アイカラスが即位してからは国のために魔法をつかうことは行わず、ローザベルの両親に星詠みを頼み自分は悠々自適な隠居生活を送っていた。なぜ魔法をつかわなくなったのかと問いかけた幼いローザベルに、「魔法をつかうには愛を与える対象が必要だったのよ」と小難しいことを言ってアイーダは淋しそうに笑ったのだ。
 そしてさきほどの夢の言葉が繰り返される。わたしにとっての“愛”を与える対象……灰色の白鳥、ウィルバーさまのこと。

 ――強力な古代魔術をつかうには、“稀なる石”が持つ魔力とそれを引き出すための代償となる“愛”が必要。
 その“愛”は、恋愛、敬愛、情愛、純愛……ひとりの人間を強く想う際に生まれるというちからを“稀なる石”に込めることで成立する。なかでも古代豪族の婚姻による性愛のちからは時間干渉すら可能だと畏れられ、アルヴスから渡ってきた研究者ゴドウィンによる論文が発表されたほどだ。
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