白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

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 ダドリーが西の塔から姿を消したのを見送り、ウィルバーははぁ、とため息をつく。

 ――俺はゴドウィン兄上の囮にさせられた、ってわけか。

 怪盗アプリコット・ムーンを国家転覆を図る悪党だと思っていた王家は、その裏でほんものの悪党が国家転覆を図ろうと機会をうかがっていたことに気づけずにいた。
 ウィルバーがアイカラスとともに怪盗アプリコット・ムーンを捕獲し、花の離宮で彼女を取り調べている間に潜入してきたとされるタイタス・スケイル。
 彼がはじめに接触したのがマイケルの生家、コルブスの一族だった。コルブスの一族は純粋にゴドウィンを玉座に推したのか、それともタイタスに嵌められたのか、ダドリーの話では理解できなかったが、マイケルがタイタスと関係していることは確実なのだろう。
 タイタスは姿を見せることなくゴドウィンと接触し、自らが処方したリヴラの秘薬を渡したとされる。そしてその薬をウィルバーの鞄に隠し入れるようマイケルに命じた……ウィルバーとローザベルを花の離宮から追い出すために。
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