白鳥とアプリコット・ムーン ~怪盗妻は憲兵団長に二度娶られる~

 その際に、手に持っていた液体の薬を怪盗アプリコット・ムーンへふりかけていたらしい。らしい、というのはウィルバーが何も見ていなかったからだ……本人は魔法の発動でひかりが眩しすぎて何も見えなかったんだと弁解しているが、こういうときこそ愛する女性を護るべきだろうが、とアイカラスは脱力する。

 すべてが終わったとき、怪盗アプリコット・ムーンは薬をかけられ、意識を失っていた。憲兵団と懇意の宮廷医に診てもらったところ、死に至る猛毒ではないと判断されたが、黒装束についていた薬品をオリヴィアに確認させたところ、媚薬効果のある眠り薬……催淫睡眠剤という厄介なものだと判明した。眠りつづける彼女を起こすには、繰り返し性交し、胎内に子種を蒔きつづけることが必要なのだという。
 タイタスは怪盗アプリコット・ムーンを薬で眠らせた後に犯そうとでも考えていたのだろう。だからこのようなふざけた薬を隠し持っていて、最後のあがきでぶちまけたのだ。薬が何かわからない限り、永遠に眠りつづけるという、リヴラの一族でなければまず知らない、特殊な薬を。
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